私はエルソールフットボールクラブの代表として、20年以上、小学生のサッカー指導に向き合ってきました。その中で、保護者の方からよくこんな相談を受けます。
「うちの子、サッカー始めたんですけど、最近行きたがらないんです…」
あれだけ楽しそうに始めたのに、半年・1年で「もう行きたくない」と言い出す子がいます。
一方で、6年間ずっと楽しそうに通い続け、卒団後もサッカーを続ける子もいます。
その違いは、どこにあるのでしょうか。
結論:「上達」よりも「環境」
長年子どもたちを見ていて気づいたことがあります。
サッカーが嫌いになる子と、好きでいられる子の違いは、「どれだけ上達したか」ではなく「どんな環境にいたか」です。
うまくなった子が好きでいられるのではありません。
好きでいられたからこそ、結果としてうまくなる子もいる。
逆に、うまくなる前にサッカーを離れてしまう子もいる。
では、子どもがサッカーを好きでいられる環境とは、どんな環境なのか。
3つのポイントに分けて、お話しします。
① 怒鳴られない環境
少年サッカーの現場で、いまも残念ながら見かけるのが「怒鳴る指導」です。
「なんでそこでパスしないんだ!」
「もっと走れ!」
「いつまでミスしてるんだ!」
大人にとっては「叱咤激励」のつもりでも、子どもにとっては恐怖体験になります。
怒鳴られた経験が積み重なると、子どもの頭の中ではこんな変化が起きます。
- ミスが怖くなる → 挑戦しなくなる
- コーチの顔色を見る → 自分の判断ができなくなる
- サッカーが「怒られる場所」になる → 行きたくなくなる
子どもがサッカーを好きでいられる第一条件は、「ミスしても怒鳴られない」ことです。
② 試合に出られる環境
もうひとつ、見落とされがちなポイントがあります。
「試合に出られない時間」が続くと、子どもはサッカーが嫌いになるということです。
クラブの規模が大きくなりすぎたり、運動能力でランキングが付けられたりすると、一部の子は試合のベンチにずっと座ったまま、応援だけで終わることがあります。
大人は「試合に出られなくても、応援も大事」と思うかもしれません。
けれど、6歳の子どもにとって、ベンチで試合が終わるという経験は、こう感じられます。
「ぼくは、必要じゃないんだ」
1回ならまだしも、毎週これが続くと、サッカーへの気持ちはすり減っていきます。
逆に、たとえ短い時間でも、自分が試合に出て、走って、ボールに触れた経験があれば、子どもは次の練習を心待ちにします。
「全員に出場機会がある」「補欠だけで試合が終わらない」
これも、子どもがサッカーを好きでいられる大事な条件です。
③ 「自分で考える」を許される環境
3つ目は、少し見落とされがちなポイントです。
大人がいつも「ああしろ、こうしろ」と指示する環境では、子どもは「言われた通りに動くだけ」になります。
これは、最初は楽です。考えなくていいから。
けれど、しばらくすると、こんな気持ちが出てきます。
「自分でやってる気がしない」
「サッカー、なんか面白くない」
子どもは、本来「自分で考えて、自分で決めて、自分でプレーする」ことに喜びを感じます。
言い換えれば、「自分が主役」だと感じられるとき、サッカーはどこまでも楽しいのです。
大人の指示で動くだけのサッカーは、ただの作業になってしまう。
作業は、楽しくありません。だから、続きません。
逆に、サッカーが好きでいられる子の特徴
ここまでの3つを裏返すと、サッカーが好きでいられる子の環境はこうなります。
- 怒鳴られない。ミスしても、責められない。
- 試合に出られる。短くてもいいから、ピッチで活躍する時間がある。
- 自分で考えて、自分で決めることが許される。
この3つが揃うと、子どもは自然とサッカーが好きになります。
そして、好きでいられたからこそ、長く続けられるし、結果として上達します。
家庭で気をつけたい、たった一つのこと
最後に、保護者の方に1つだけお願いしたいことがあります。
それは、試合や練習の帰り道で、お子さんを「評価」しないことです。
「今日のあのプレーはダメだったね」
「もっと走らないと」
「あの子の方が上手だったね」
大人が良かれと思って言うこの言葉が、子どもからサッカーの楽しさを奪うことがあります。
代わりに、こう聞いてみてください。
「今日、楽しかった?」
「どんなプレーが面白かった?」
「次は何をやってみたい?」
評価の言葉ではなく、気持ちを聞く言葉を増やす。
これだけで、子どものサッカーとの向き合い方が変わります。
最後に
子どもがサッカーを好きでいられるかどうかは、本人の才能ではなく、まわりの大人が用意した環境に左右されます。
怒鳴られず、出番があり、自分で考えていい場所。
そんな場所にいる子は、何年経ってもサッカーを楽しんでいます。
クラブを選ぶときは、上手なコーチがいるか・厳しい指導があるかではなく、「子どもがサッカーを好きでいられそうか」を、ぜひ一番大切な基準にしてください。
それが、長く続けるための、何よりも大切なポイントです。私は20年指導してきて、いつもそう思っています。