私はエルソールフットボールクラブの代表として、20年以上、小学生のサッカー指導に向き合ってきました。

同じ練習をしている子どもたちでも、ぐんぐん上達する子と、なかなか伸びない子がいます。

「うちの子も伸ばしてあげたい」──保護者の方からよく相談を受けます。技術練習を増やすべきか、いいスクールに通わせるべきか、上手な子と一緒にプレーさせるべきか。

ですが、20年見てきて気づいたのは、上達を決めるのは技術練習の量ではなく、家庭での過ごし方だ、ということです。

今日は、上達する子と伸び悩む子の、家庭での3つの違いについてお伝えします。

違い①「サッカーが好き」の中身が違う

「好きな子は伸びる」──これはサッカーに限った話ではありません。けれど、私が大切にしているのは「好きの中身」です。

上達する子は、「親に褒められたいから好き」ではなく、「サッカーそのものが好き」です。

練習や試合を見ていると、こんな違いに気づきます。

  • 上達する子:自分から「ボールが来てほしい」と動く。失敗しても、もう一度ボールを受けたがる。
  • 伸び悩む子:ミスを怖がる。親や仲間の目を気にして、安全なプレーを選ぶ。

この差は、家庭での親の関わり方が大きく反映されています。

「今日は何点取った?」「なぜミスしたの?」──結果ばかりを問う家庭の子どもは、サッカーが「親への報告のためのもの」になってしまう。すると、ミスを隠したい、怒られたくない、という気持ちが先に立ち、挑戦が止まります。

逆に、「今日は何が楽しかった?」というひと言があるかどうかで、子どもの「好き」が本物として育つかどうかが変わってきます。

違い②家での「考える時間」を持っている

私たちエルソールが指導の柱にしているのは「観る・考える・決める・実行する」という4つの力です。これはピッチの上だけの話ではなく、家庭でも育てられる力です。

上達する子の家庭では、こんな会話が日常にあります。

「今日の試合、ゴール前で〇〇くんがフリーになってたよね。気づいてた?」
「相手のキーパー、どんなプレーが苦手そうだった?」
「あの場面、もう一度同じ状況になったらどうする?」

問いかけて、答えを子どもに考えさせる。親が答えを言わない。これが、家庭での「考える時間」です。

一方、伸び悩む子の家庭でよく聞こえてくるのは:

  • 「もっとシュート打たなきゃダメだよ」
  • 「あそこはパス出さないと」
  • 「お父さんならこうしたのに」

──親が「答え」を渡してしまうと、子どもは「自分で考える機会」を失います。

サッカーは、瞬間ごとに違う状況の中で、自分で判断する競技です。家庭で考える習慣がない子は、ピッチでも判断できません。逆に、家庭で考える習慣がついている子は、ピッチでの判断の速さと質が、明らかに違います。

違い③親が「教えすぎていない」

これは私が最も伝えたいことです。

保護者の中には、ご自身がサッカー経験者で、お子さんに技術を教えてあげたいという方も多いと思います。その気持ち、よく分かります。けれど、20年見てきて言えるのは、「親が教えすぎる家庭ほど、子どもは伸び悩む」ということです。

なぜか。

子どもにとって、いちばん大切なのは「自分で工夫した経験」です。

  1. 自分で考えて
  2. 自分で試して
  3. 自分で失敗して
  4. 自分で次を考える

このサイクルが回っている子は、コーチが何も言わなくても、勝手に上達していきます。

親が良かれと思って「こうしなさい」「ああしなさい」と言うほど、子どもは「指示待ち」になります。ピッチでも、コーチや親の顔色を伺うようになる。

それは、サッカー選手としても、人としても、伸びていく道ではありません。

上達する家庭に共通する、たった一つのこと

3つの違いを並べてきましたが、突き詰めると、すべては一つのことに帰結します。

「自分自身に矢印を向けている」

うまくいかないとき、原因は外(コーチ・仲間・運)にあるのではなく、自分の中にある。だから、自分で考えて、自分で動く。

上達する子は、これを家庭で当たり前のように学んでいます。

そして、これはサッカーだけの話ではありません。学校の勉強でも、友人関係でも、将来の仕事でも、自分の人生に責任を持って向き合える人間に育つかどうかは、ここで決まります。

私たちエルソールが「サッカーを通じて、人として育てる」と言っているのは、こういうことです。

最後に──家庭でできる、シンプルな3つの問いかけ

明日からすぐにできる、家庭での問いかけを3つご紹介します。

  1. 「今日、何が楽しかった?」(結果ではなく体験を聞く)
  2. 「その時、どう考えたの?」(判断の理由を引き出す)
  3. 「次は、どうしたい?」(自分で答えを決めさせる)

たったこれだけです。

技術練習を増やす必要も、いい道具を揃える必要も、必ずしもありません。家庭での3分間の会話が、ピッチの40分(20分ハーフ)を変えます

サッカーで子どもが上達するかどうかは、ピッチの外で決まっている──私は、20年指導してきて、そう思っています。